スティーブ・クロッパーは地味だけど華のある職人だ

好きなギタリストシリーズ第四弾です。
ティーブ・クロッパー。


もう大好きです。
分かる人にはわかるし、知らない人には誰?ですよね。
ブッカー・T&MG'Sのギタリスト、というより、
メンフィス・スタックスのハウスギタリストで
オーティス・レディングやサム&デイブ、
はたまたブルーズ・ブラザーズ・バンドや、
最近では忌野清志朗のバックでもギターを弾いています。


歌を生かすことにかけては、最高のギタリストです。
でしゃばらず、でも、メリハリは十二分にあり、
歌を盛り上げるだけ盛り上げる。
タメが効いているのに、でもスピード感もあり、
歌が引き締まるのです、この人がギターを弾くと。
カツカツジャ〜ンジャジャ♪というあの絶妙なカッティング。
僕は歌の中での、全体のサウンドの中での、ギターの使い方、
歌の生かし方の多くをこの人のプレイから学びました。


いわゆるリードプレイは、あまり弾かないのですが、
このコードカッティングとリフつくりのうまさだけで十分です。
地味に見えて華のある、職人技なのです。


キース・リチャーズと、このひとのコードワークのかっこよさ。
傾向はちょっと違うけれど、本当に好きです。
そして、自分の歌のバックのギターアレンジを創るのにも、
かなり研究しました。


名演が多すぎて、どれにするか迷うけれど。
今日はサム&デイブの『ソウルマン』をお薦めします。
あのいやらしい間。そして緊張感と大きなうねり。
サイコーとしかいいようがありません。
名曲中の名曲だけれど、あのギターでなかったら
魅力の何割かは減じていたことでしょう。


すげー。


相模の風
いしはらとしひろ
http://www.sagaminokaze.com/main.htm


 

ベスト・オブ・サム&デイヴ

ベスト・オブ・サム&デイヴ

スライは『サンキュー』といいながら 匍匐前進していた

スライ&ザ・ファミリーストーンの「暴動」に収録の
「サンキュー・フォー・トーキン・トゥ・ミー・アフリカ」は
すごく好きです。
このアルバムが発売される前に出た「サンキュー」と
同曲なのですが、別テイク。
いや、別の曲と言っていいくらい演奏から受ける感じは違いますね。


シングル盤の方のテイクにずっと馴染んでいました。
こっちはいわゆるファンキー。
ストレートにカッコイイ。
ラリー・グラハムの元祖・チョッパーベース大炸裂の
ハードなダンスナンバーです。
いや歌詞はもの凄くシリアスだから気軽に踊る曲では
ないのでしょうが、このグルーヴ感、もう踊るしかないでしょ、
という演奏です。


それに比べると、アルバムの方はえらくだるい。
ファンキーのかけらもないように最初は聴こえます。
なんでこんなバージョン入れたんだ?シングルの方が全然いいのに。多分、大多数の人がそう思うのではないのでしょうか。
聴き比べをしたら。


この大地を匍匐前進していくような、ゆったり、
というよりはもったりとした感じ。
しかも妙にボトムの音の弱いミックス。
はっきりと変です。


でも、スライ・ストーンは当然、承知の上でこのバージョンを
アルバムに入れたのでしょう。
このアルバムを聴き始めて10年くらい経って
やっと、わかりました。(もちろんぼく流にですが)

彼は違和感を体現したかったのだと思います。
だから、素直に踊れてしまう、そしてカッコイイアレンジを
敢えて捨てたのです。
かっこよさに痺れさせてはイケナイ、
と思ったに違いないはず。
より「個」を感じさせる音なのです。
一人の男の視点がはっきりと見えるのです。

この超だるいバージョンの「サンキュー」
10年かかって分かった味わい。
僕にとってはこの音をリアルに感じるまで、10年かかりました。
面白いですね、音楽って。


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ルー・リードの歌心

ルー・リードと歌心。
およそ縁遠いものに思えますよね。
でも。

ライブは生もの。手を抜いたらそれはすぐ結果に出ますし、その時の気持ち一つで、音も違います。
今は自分としては非常にいい状態だと思っています。
「歌」にすごく「なりきれている」気がするのです。
もちろんそれを判断するのはお客様だから、ぼくはあんまり余計なことを言わない方がいいのかもしれないですね。
でも。歌そのもの、が大地からわき上がって、僕の体をするっと通り抜けてお客さんの元に届く、みたいな感覚がたまにあるのです。(いつも、と言えないのがまだ未熟なのですが)。
もちろん技術的なことは大事なのですが、「そういう感覚」こそが歌だな、とホントに思うのです。


技術的には僕の歌もギターも「未熟なところだらけ」です。
それは充分に自覚しています。もっとうまくなりたい、と素直に思う。
良くありがちな「歌は心じゃ」。というのにも陥りたくない。(そういう人はたいがい、練習不足の言い訳に『魂』をもちだすのです)


それを踏まえた上で、溢れ出てくるもの。音。
それこそが大事なのだなぁ。きっと。

久々に昨日、ルー・リードの「ライブ・イン・イタリー」を聴きました。
ルー・リードもまぁ、歌の上手さということでみれば、かなり?な人ですよね。
でもあの荒涼とした音風景の中からこぼれ落ちてくるものこそ、「歌心」なのだろうな、と思うのです。
前から好きなアルバムだったけど、なんだか、昨日聴いてはっきりと分かりました。

ルー・リードの歌心。
僕の歌心。
大地からわき上がる 歌の精霊 の言葉。


いしはらとしひろ

iPod ,iTunesで聴けるようになりました

今日はちょっと自分の音の宣伝です。
私のレーベル・相模の風で運営している『風ラヂヲ Ch1』
というポッドキャスト番組が
iTunesに登録されました。
もちろんiPodで聴けます。

iTunes で聴いたり、ダウンロードする方法は?

まずiTunesを開きます。

iTunesのホームの左上の方に
iTunes store
ミュージック
ミュージックビデオ
オーディオブック
Podcast...
という風に目次のリンクがあります。
このPodcastをクリック。
  ↓
Podcastのページに移ります。
今度はページの右上を見てください。

クイックリンク
ブラウズ
パワーサーチ...
というリンクがあります。
ここでブラウズをクリックしてください。
そうすると、ページの真ん中上部に
『カテゴリー』という表示が現れます。
その中の『ミュージック』を
ダブルクリックしてください。
iTunesで配信している
音楽系ポッドキャスト番組の一覧が、
ページ下部に出てきます。
アルファベット〜あいうえおの順に出てきます。
風ラヂヲはずっとずっとスクロールしていって、
今日現在では一番下から二番目のところにあります。

風ラヂヲの欄の一番右に『登録する』
というところをクリック。
そうすると、最新版の風ラヂヲが
配信されるよう登録されます。
また、矢印をクリックすると
音源詳細のページにジャンプします。
「エピソードを入手」をクリックすると、
その曲のデータがダウンロードされます。

なんか、ずいぶん長くなっちゃいましたが。
風ラヂヲの曲を、ぜひ皆さんのiPodに入れて
楽しんでください。
おーいえー。


いしはらとしひろ

ジョージ・ハリスンは弱さを表現させたら世界一!

今日もギタリスト話を。
前回取り上げたのがキース・リチャーズでしたが、
今日はジョージ・ハリスン。
もちろん好きだから、なのですが。


しかし、べたべたですよね。
好きなギタリストが、ストーンズビートルズだなんて。
自分でもちょびっとべたかな、とは思います。
でも、掛け値なしに本当に好きなのだからしょうがない。
それにジョージも、キースもギタリストとして、
もっと評価されていいはずだ、と思っているのです。


ジョージはうまい下手、だけで言ったら、
けしてうまいタイプではありません。
僕よりはうまいけれど
(ははは、許してくれ、天国のジョージさん)。
でも、ジョージのギタリストとしての表現力は
見事なものです。
そしてフレージングやコードの独特な、しかし、
一発でジョージと分かるあの感じ。
音色のセンスもすばらしいのですよね。


ジョージと他のギタリストを大きく分ける、
一番大きなところはなにか?
それは『弱さ』の表現だと思います。
力いっぱい、とか、根性、とかは
ジョージはきっと苦手だと思う。
でも、音楽的な表現でも、人間的な表現でも、
ジョージほど、『弱さ』を表現できる人は
いないと思います。
その弱さと繊細さに『力づけられる』のです。


ジョージのベストプレイは、
ちょっとパチモンくさくもあった、
再結成ビートルズの「フリー・アズ・ア・バード」です。
あのイントロの、あの間奏の、人生の陰影すべてを
包み込んだようなスライドギター。
感動以外に言葉がありません。
僕はあの曲を聴いた時に、あのスライドギターを聴いて、
思わず涙が零れ落ちました。
ギターソロを聴いて涙した、なんて初めてかもしれません。
心をわしづかみにされました。


人生そのもののような、深く哀しく、そして弱さを
表現しきったフレーズと音。
技術的にはぜんぜん大したこと弾いていないのに、
あの深さ。
自分がいつあの地点までいけるのかと思うと、
めまいがしますが。


ジョージを聴いていたからこそ、僕も、
ここまでくることができたし、
生きる元気もわくってものです。


なんとも不思議な、しかし偉大なギタリストです。


ビートルズにおけるジョージも、ソロのジョージも
滋養たっぷりな、心の必需品です。
聴いてほしいなぁ。


いしはらとしひろ

ギタリストを体現している男 キース・リチャーズ

先日取り上げた、井上陽水さんの話に続いて、ギタリスト話を。


自分もギター弾きなので、好きなギタリストはたくさんいます。
どちらかというと、特別うまくはないけれど味がある、
というタイプの人が好きです。
いわゆるテクニシャン、にはあまり興味がないほうかな。


キース・リチャーズ。
言わずと知れた、ですね。
ローリング・ストーンズのギタリスト。


自分がプレイ面でも影響を受け、なおかつ好きだ、
ということで言ったらジョージ・ハリスンとならんで、
僕にとっての偉大なるギタリスト、です。
しかし、大好きなギタリストが、ビートルズストーンズってのは
どうなのよ?あまりにべたべたですね。
でも、本当に好きなんだから、よしです。


昨年のストーンズの来日も見たのですが、かれはもはや、
ギター仙人の域に達していると思います。
だって弾かなくてもかっこいいんだから。
彼はオープンチューニングを多用しているので、
左手で弦を一本も押さえず、右手だけ弦をはじく、
あるいは間の多い曲だと、一発音を出して、後は両手ぶら〜ん、
なんてことをよくやるのです。
その、弾いていない「間」にものすごい情報量と
かっこよさがあるのです。
「情報量」なんて言葉を使うとなんか変だな。
キースっぽくないような。
でもそうとしか言いようがない、素敵な「間」なのです。


もちろん彼のリズムギタリストとしてのバッキングセンスや
リフメーカーとしての才能は言うまでもありません。
覚えやすくて簡単で、しかも「燃える」リフ。
サティスファクションのリフなんて、ギターを始めて
一週間の子だって、ちょっと頑張れば弾けるでしょう。
でも、そういう、「簡単で」「かっこいい」もの、
というのはそうそう作れないのです。
キースはその辺、天とか大地とかネアンデルタール人とか、
何かその辺のものと指先が直結している人なので、
思考回路を通さずに、かっこいいものを弾いています。
見てきたようなことを書いていますが、
多分間違いないと思いますよ。


影響も受けたし、でも受けたがゆえに、
「絶対にこうは弾けないよな」とも思うし。
なんといっても、60歳を過ぎてもひたすら
かっこいいギタリスト。
大好きです。
彼がいるから、こっちも40歳過ぎても
のうのうと音楽やっていられるってモンです。


キース・リチャーズに感謝。



いしはらとしひろ

凝っているけれど軽さがおいしい ポール・マッカートニー

ポール・マッカートニーの作るメロディには
豊かさと普遍性があると思います。
ビートルズは言うまでもなく、ソロになってからの作品も
もちろんそう。
僕の個人的な好みでは、ポールの力作、というよりも
肩の力が抜けて、なんとなくすっと作ってしまったような曲に
よりポールのよさが出ているような気がして、好きです。


その中でも愛している、と言っていいくらい好きなのが、
「ラム・オン」
1971年のアルバム「ラム」に収録されているのですが、
さりげないメロディと、さりげないように聴こえて、
実はものすごく凝ったサウンドブレンドが心地よいです。


思うに、この頃のポールは、同時期のビーチボーイズ
すごく研究していたのではないだろうか。
彼が「ペットサウンズ」にぶっ飛んで
「サージャント・ペッパー」が、あのように凝りまくった作品に
なったのは有名です。
このラムは、1970年前後のビーチボーイズの匂いが
けっこうします。
この頃、ビーチボーイズは人気は凋落して
アルバムも売れていなかったのですが、
サウンドの豊かさは相変わらず。
ポールもひょっとしたら聴きまくっていたのかも
しれないですね。


軽さとマニアックさの混在、でもリラックスできる「ラム・オン」
聴き飽きません。


去年、自分のライブのオープニングSEはずっと、
「ラム・オン」を使っていました。
自分のやるライブの雰囲気に合う、と思っていたのは
もちろんですが、単純に「この曲いいじゃん」とも
思ってほしかったのです。


よいですよ!


いしはら としひろ