時代を間違えた男 レニー・クラヴィッツ

レニー・クラビッツは時代を間違えて生まれた男だ。
彼の音楽にある、1960年代、70年代前半の音に対する、尊敬及びファン的な愛情。
一度、過去にスタイルとしてできあがってしまった音楽に対する、「その現場にリアルタイムで立ち会えなかった悔しさ」が音にも〜例えばミックスの仕方に〜出ている。彼がジミヘンやビートルズが大好き、というのはインタビューなどで語られているので、ご存知のかたも多いだろう。

だがその一方、彼はまぎれもなく現在の音を出している。
それは彼のビート感に現れている。
ゆるくない、たるくない、おおらかでない。
切迫感が溢れている。90年代〜2000年代の歪みが音に、にじんでいる。

セカンドアルバム『ママセッズ』収録「フィールズ・オブ・ジョイ」
この曲の荒涼とした景色は1991年の空気を的確に反映しているように思う。
それは例えばダブルトラックでひしゃげたヴォーカル、エコー感の少ない、すぐ耳元で演奏されているようなミックス。
「荒れ果てた喜びの園」にたたずむそれは、僕自身の荒涼だったのかもしれない。