荒馬を乗りこなすニール・ヤング

ニール・ヤングはクレイジーホースと組んで演奏するときがいちばんかっこいい。


基本的には、ニール・ヤングとクレイジーホースは別物である。
いつもつるんでやっているようなイメージがあるが、そうでもない。
今数えたら、一緒にやっているアルバムは11枚だった。
ニールは30枚以上アルバムを出しているから約3/1である、一緒にやっているのは。


クレイジーホースは「荒馬」の名の通り、ラフでタフなリズムセクションだ。
そこそこ名の通っているプロのバンドの中では、間違いなくテクニックのないバンドである。
だが、勘違いしてはいけないのだが、テクはないが彼らはとても上手くなっている。それは昔よりも今の方が、断然迫力があってうねっている、ということである。
あらためて言うが、未だに大したテクニックはない。
できないこと、はかなり多いと思う。
が、にもかかわらず、この豊かな表現力はどうだ。
ある特定のスタイルにしか対応できないとしても、これだけ情感があって、かっこよければいいではないか。
しかもドラムのラルフ・モリーナも、ベースのビリー・タルボットもまるで、下っ端の麻薬の運び屋のような風情だ。リズムギターのフランク・サンペドロだけは場末のバーのマスターみたいだ。
ロックミュージシャンでなかったら、完全にあぶない人である。こんなやせぎすのやつらが、こんな鉈で荒野を切り開くような演奏ができるなんて。


イアン・マクナブのソロアルバムを持っているのだが、それを買った動機は不純である。
クレイジーホースが数曲バックをつとめているから。
そして面白いのは、このクレイジーホースがバックを受け持った曲に関しては、イアンは完全に「ニール・ヤング化現象」を起こしてしまっているのだ。
ニールのようなギター、ニールのような曲調、ニールのような歌いっぷり。
単なるミーハーか?あんたは。
だが、思うにこれは初めは全然ニールっぽくなかった曲が、クレイジーホースとセッションするうちに「ニールヤング化」してしまったのだろうと想像する。
なぜなら、そのスタイルこそがいちばん彼らが勢いを発揮できるからなのだ。
不器用な天才達をバックにしてしまったのだから、こうならざるを得ない。


そんな荒馬たちと中年のニールが爆裂している曲「ファッキン・アップ」を今日はお薦め。
1990年「傷だらけの栄光」に収録。
目茶カッコエエです。