インテリジェンスから遠く離れて〜底抜けに楽しいジョージ・ブレイズ

音楽の聴き方なんてものは人によって、その時の気分や環境によって、かなり違うものだ。
これから紹介する音楽も多少、時と場合を選ぶかも。

音楽に格調の高さ、芸術的感動、高尚さ、静謐、魂の叫び...等々を求めたい時。そういうときには、これから紹介する音楽は向かない。
聴いたからって芸術的カンドーに打ち震えたり、人間のグレードがあがったような気になったり、世界観が一変したり...。そんなことは多分起こらない。

なぜって、無類に下世話でやたらに楽しい、ただそれだけの音楽だからだ。

ジョージ・ブレイズのアルバム「ラフィング・ソウル」をお薦めであります。
魂が叫ぶどころか、笑っちゃってるアルバムなのです。

ジョージ・ブレイズ、といってもほぼ無名だと思うので、簡単に紹介すると、ソウルジャズ系のサックプレイヤー。
このアルバムは1964年の作品。
サックスを二本同時に吹くという、曲芸じみたことも得意なようだ。このアルバムでも、同時吹きは何曲か聴ける。
ヒット作、と呼べるほどの作品はなかったようで、ブルーノートに吹き込んだ数枚と、このアルバム(これはプレスティッジというレーベルから出ている)くらいが現在でも入手可能。

でもって。
聴いていると思わず、にやっと笑いたくなるような、そんな曲の連発なのだ。
安っぽい音質。全編に横溢する下世話な雰囲気。高尚さのかけらもない、ただ、楽しさを抽出したような、メロディとリズム。しかもなんとなく、うさんくさくていかがわしい。ということはサイコーの音楽ということではないですか、みなさん。

このアルバムを買った動機はわりと不純だった。
このお薦めでも紹介している、僕の大好きなギタリスト、グラント・グリーンと、これまた好きなオルガンプレイヤー、ジョン・パットンがサイドメンとして参加しているから、というのがこのアルバムを買った理由だ。
失礼ながら主人公たるジョージ・ブレイズ氏ではなく、脇役の方を目当てで買ってしまったのだ。

グラントの音楽も、ジョン・パットンの音楽もある種のユーモアは感じられる。どちらかというと、下世話方面の人たちではある。
でも、ここまで全開にアホに傾いた二人は聴いたことがないぞ。一体どうしてしまったのだろうか?これがジョージ・ブレイズ氏の出しているオーラのせいだとしたら、この人は大した人である。
なんというか、このアルバムを作るときのセッションに参加した人は、全員ネジが2〜3本緩んでいる感じなのだ。
ゆるゆるで全開、という奇妙な状態で、「楽しいぞ」の世界を驀進してしまったかんじ。すげー。

なんか、ドライブとかしながら聴きたいな。
普段僕はドライブ的な行為自体滅多にしないし、(僕にとって車は仕事のための輸送手段だ)カーステレオさえ車についていないのだが。
びゅんびゅん飛ばすのではなく、のんびりと走りながら聴きたい音だ。ぼんやりと、なんとなく出かけたドライブが、これだけで楽しくなりそうな気がする。
こういう音楽を日常的に楽しめる世の中になったら、犯罪とか減るような気がするんだけどなぁ。

心の底から楽しいアルバムです。
緩みます。