青春ははかっこ悪い

僕が持っているジャクソン・ブラウンのアルバムは「ランニング・オン・エンプティ」一枚きりである。
一枚しか持っていないから、さほど好きではないのか、というとそうでもない。
少なくとも、この「ランニング〜」はかなり聞き込んだ。
特にタイトル曲は素晴らしく、ジャケットとも相まって「夏の夕暮れのハイウエイを、車ではなく、一人で走っていく」の図を想像しては、感動していたものだ。
確か買ったのが20才か21才くらい。多感な頃である。(オレにだってそんな日々があったのだよ)

好きだったにもかかわらず、なぜのめり込まなかったのか。他のアルバムを買ったりしなかったのか。
おそらく。
このアルバム、もっと言ってしまえば、「ランニング〜」一曲で、完結してしまったのだ。僕の中で。

この曲の演奏、特にデビッド・リンドレイの弾くスティールギターが素晴らしい。
僕にとって「青春」を具現化した音なのだ。
青春と言う言葉の持つ恥ずかしさ、だささ、かっこわるさ、...そういうモノを全部含んだ上の潔さとパワー。

もちろん、ソロがいいから好きなわけではない。歌が、曲がよいからこそのソロである。
でもこの曲の持っているエッセンスを「これでもか」と言うくらい見事に抽出しているのだ、デイブのソロは。

青春はとてもかっこわるく、でもたまに振り返ればちょっと甘酸っぱい。なかったことにしたいことがあまりにも多すぎるゆえ、もう振り返りたくない、ってところもある。
だからなのかな、あまりもう、聴かなくなってしまったのは。

もちろん、こんなことをあの曲でいつも感じていたわけではない。
でも、久々にあの曲のことを思い出してみたら、もの凄く青春の匂いがしたんだ。

でも、今夜辺り、きっと聴いてしまうだろう。
そして甘酸っぱくも恥ずかしい思いにちょっと顔を赤らめるのだろう。